■夜明け前の涙 【後編】■
[小説]




ふぁぁ、とおおきく欠伸がでた。





だって今は5時前。

朝の。



眠すぎ。




しかも




寒い。








「寒ないか、夕貴」

「寒い。めっちゃ寒い。死にそう凍えそう。

ココア飲みたいストーブあたりたいコタツ潜りたい…ってーか…


 

帰りたい!!!」





「…そうか」





晃に一通り文句を言い終えた後、私は再び
暗い空と暗い海に目を向ける。




晃が何でこんな所に私を呼び出したのかは知らない。
寒い寒い10月の終わりに、こんな海辺へ。

目の前の海から冷たい空気が流れて来る。
帰って尚二度寝をしようと目論む私は、晃の前でもズボラにパジャマの
上から厚いジャンパーという情けない格好でここに来た。



「晃。幾ら何でもなぁ。」

「ん。」



「幾ら、あたしらの家から海が近いからって。
こんな朝早く(しかも貴重な日曜日)になんでこんな所来させるんよ」



「寒いか」


「だからさっきからゆうてるやん!!」


あまりの寒さにキレた私は怒鳴り散らす。

全く、どういうつもりだこいつ。


「じゃ、これ羽織っとけ」


そういって晃は自分の来ていたジャケットを私に羽織らせてくれる。


「あ…、あきら、寒いやん」


「俺は別にかまわへんよ」



…。




今のあたしにはその優しさが痛いんだよ。


ばーか。



そんな優しさは、イラナイ。

あんたの大好きな人にだけ、優しくしてればいいじゃん。



あたしに


優しくする理由なんて無い癖に


只の


友達の、癖に…







優しくされたら、


また「すき」が膨らむじゃない




忘れようと


折角人が忘れようとしているのに







「大好きなあんたのこと」







「…夕貴」


「…泣くなよ」




鈍感晃。もううんざりだよこんな男。



「お前、最近よく泣くよな」



あんたの所為だよ!!全部!!



「ほら見ろよ、目の前をさ」







…、きれいな、朝焼け。







「きれいだろ。だから泣くな。」





オレンジ色の朝日が、ゆっくりゆっくり地平線から昇ってくる。
その光に私たちはいつのまにか包まれていた。

長年海の傍に住んで居ながら、
どうしてこんな綺麗な光に気がつかなかったんだろう。


「お前、最近よく泣いてたろ。

理由は…わかんねぇけど。

これみたら、ちょっとは元気になるかな、なんて」



涙が、知らず知らずに溢れ出てくる。


いつからこんなに泣き虫になったのかな。




「ばか晃…」


「…やっぱ、駄目だよなこんなん」


ため息交じりにポケットからハンカチを出す晃。
最近私がよく泣くので、彼のポケットにはハンカチは常備されている…



「ありがとぅ…」



私の涙を拭いながら、目を丸くする晃。



「元気に、なったか?」


「うん…ちょっと。」


「どれくらい?瓦割ができるくらい元気になったか」


「ありえない」




ふふふ、と笑いながら、また朝日を見つめなおす。




「だいすき」


「んぁ?なんていった?今。」






「…なんも、ないよ」






あんたが誰をすきだろうと

あたしの気持ちは絶対かわらない


かわらないあなたの優しさがここにあるように。


可奈
2004年10月25日(月) 17時38分08秒 公開
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■作者からのメッセージ
時間に追われて書くとやっぱり駄目ですね…

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