■夜明け前の涙 【前編】■ | [小説] |
「あれ。」 こんな筈じゃ無かったのに 「あれ。」 おかしいな。 「あれれ。」 なんで、 わたしのめから「何か」ながれてるんだ? 「がんばったのに」 「だめだったんだ」 駄目だったんだ。 あたしじゃ。 「晃ー。」 「晃ぁー。」 呼んでも呼んでも返事は無い。 「なぁ、どないしたん。 そんなに呆けて…」 …。 「晃っっ!!」 ムカツいて机を激しく叩くと漸く晃は顔を此方に向けた。 「んぁ…?どうした、夕貴?」 …まさか、あたしの存在にも気付いて無かったのか、コイツは。 「…席替えするから、早くクジ引いてよ!」 私の手にあるのは、沢山の「棒」 棒に書かれてあるのは、席と班の番号。 「あぁ、悪ぃ。今引くから…」 晃はぎこちない手つきで棒を引く。 棒には「6」と「5」という数字が刻まれていた。 「何、此れ。如何いう意味。」 「…聞いてなかったん!?」 ほとほと呆れて、言葉も失う。 「だから、アンタは6班で前から5番目っていう意味やんっ!」 「…6班…?」 皆がクジを引き終わった所で、場所移動。 因みにあたしは、一斑。 大好きな晃がいる所とは、教室の端と端程に離れてしまった。 …どうせ、こんな所だろうと思ってましたけど。 休み時間に入って、すかさず6班迄ダッシュを駆ける。 「あっきらぁー。離れちゃって残念や…」 な…。 晃の隣には、クラス一の美女で、勉強・スポーツ何でもできるという 皆の憧れの山下めぐみがいた。 そして早くも仲睦まじく会話をしていた。 なんだ、これは。 嬉しそうな、晃の横顔。 ふ、と三日前に聞いた晃の言葉が蘇る。 「なぁ晃!お願い…何処のクラスかだけでもさぁ!」 未だ私は、彼の好きな人を聞き出そうと粘っていた。 暫く黙って、彼は重い口を開いて、遂に「手掛かり」を教えてくれた。 「…こ、のクラス。」 其れを聞いて、ジャンプして踊りまわっていた自分も蘇る。 このクラスって事はさぁ。 「あたし」の可能性もあるんじゃないの!? なーんて、空想して喜んでいた自分が。 急に惨めになって。 「あはは、そうかぁ」 そっか、そゆことね。 打ちのめされた私は、晃に気が付かれる事無く自席に戻る。 「あたし」はアイツの友達で 「あのこ」はアイツの好きな人 あたしが呼んでも気付かない程、 誰かを「見ていた」 …あの眼差しの先を見るのが怖くて逃げていた自分 わかってた わかってたよそんなこと あたしは… あたしじゃ、 あいつの「一番」にはなれないんだ。 ふ、と何故か涙ではなく、 笑いがこみ上げてきた。 ふ、 ふふふ。 「ばかみたい」 |
可奈
2004年10月23日(土) 13時43分41秒 公開 この作品の著作権は可奈さんにあり無断転載は禁止です |
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None | Ahmed | 2006-11-23 06:49:39 | |
寂しいです。笑ってしまう、それが酷く胸を打ちました。弱くも為れなくて、でも強くも為れなくて……切ないですね。 | 麟姫 | 2004-10-23 20:25:28 |