■故郷へ続く道 ■
[短編小説]

この道、ずっと真っ直ぐ行けば。
きっとあの町につく筈だから・・・。


「転校?」
私がその事実を聞かされたのは、引っ越す前の日でした。
愛ちゃんの複雑な家庭の事情は、知っていたけど・・・。
急に・・・そんな・・・。
「急にじゃ無いよ。前からきまっていた事だし・・。」
尚更だよ、そんなの!
「私のは・・・言う必要無いって思っていたの?」
そういって私は駆け出した。重いランドセルを背負って。

ずっと一緒だったよね?
ずっと、ずっと・・・。



千の桜が頭上に舞う。
この桜の下で、良く遊んだな・・・。
桜の咲き誇るこの公園で・・・。

ギイギイとブランコをこぐ。勢いをつけて高く跳ね上がる。
風が気持ち良い。
そういえば中学生になってから、一度もブランコ乗っていなかったかな。
あの日、私は、一人で泣きながら此処にきたっけ。
まだ、小学生だった頃・・・。

「明日、愛ちゃんは行ってしまうんだ・・・
私、独りぼっちになっちゃうんだ・・・・。」
そう一人で考え込みながら、私は一人ブランコをこいでいたっけ。
上は大きな桜が咲き誇っていたっけ。

もう、2年もなるんだなぁ。

「鬼ごっこするもんよっといで!」
近所の小さな子も含めて、良く鬼ごっこをした。
「愛ちゃんの鬼だー!!逃げろー!!」
「まてー!!」
狭い公園を皆で汗だくになるまで走ったっけ。
桜の木を使って「だるまさんがころんだ」も良くやったな・・・。
今となっては、良く馬鹿みたいに毎日此処に来てたもんだな、なんて思う。

「いた!!ありあ!!」
そう私を呼んで駆けて来たのは愛ちゃんだった。
「ゴメンね・・・。内緒にしていて・・・。」
私の隣でブランコをこぐ。
「・・・・・・言いたくなかったんだ。
なんか、転校するって言っちゃうと、・・・涙が出そうになったから。」
私の目頭が熱くなった。
本当に、行っちゃうんだ・・・。
「また、会いに来るからさ。」
・・・会いにこれないなんて事、小学生だった私のだってわかった。
遠い・・・遠い所へ。新しいお父さんと・・・。
「忘れない・・・。
愛ちゃんの事・・・。絶対・・・。」
声が震えた。
「私だって・・・。絶対、絶対・・・・。」


一生、「友達だから。」


あの日の翌日、愛ちゃんは家を後にした。
あれから音信不通のまま2年が過ぎようとしている。
私はこうして、あの日を振り返りながら、こうしてブランコをこいでいる。
私の事なんて、もう忘れてしまったんだろうか?

それでも、いいや。

永遠の絆は、私が持っているから。


苦しくなったら、また此処へと戻ってきてください。
私は此処に居るよ。
故郷へと、また戻ってきて。
この田舎道を二人で辿って・・・・。
また、あの歌でも歌いましょう。
今年も桜が咲きますよ。

いつまでも、いつまでも。





可奈
2003年09月22日(月) 19時43分39秒 公開
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■作者からのメッセージ
はぁー。
なんか短編小説にしてみました。
ノスタルジックな感じにしようとか企んでいた
のですが、中々上手くいかないですね・・・。
この主人公、私では無いですよ!!
多少経験のある話ではありますが・・・。
私の昔話を脚色しまくった感じではあります。
そして音信不通もホントです(笑

今度は長編小説を企んでいたり・・・。
続くかどうかですが(死

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切なくも懐かしいような気持ちになりました。素敵な詩だと思います。 まりの(管理人) 2003-09-27 00:05:28
すっごく良かったです!特に最後の「苦しくなったら〜いつまでも。」の間がいいです!好きです、こういう小説vv素直な言葉で書けているあたりが凄いです。私はいつも綺麗な言葉を並べようとしちゃうので(汗 桜華 2003-09-25 16:57:04
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